「少女Aの考察、」

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「少女Aの考察、」


生きているだけで悪い事をしているみたいな人生だった。

この世界で生きていく事への不安ばかりを抱いて、夜を越えるのが毎日のように怖かった。

どこに居ても私だけがまるで異物のように馴染めず、何もかも上手くいかないのは
自分のせいなんだなんて思い込み、悲観的で絶望的で息苦しい日々だった。

神様なんて居ないという事を誰も教えてくれなかったように、教科書には載っていない
“この世界を上手く生きていく方法”をもっと教えて欲しかった。

大人の振りばかり上手くなって、退屈の誤魔化し方ばかりを覚えて、
どんどん心は壊死していくようだった。


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テレビを見れば、いじめで自殺した女の子のニュースが当然のように流れている。

自殺した彼女の事よりも、誰の責任かなんて事を押し付けあっていた。

画面の向こうの不幸を嘲笑い、批評家を気取り、モノの価値も知らず、
他人の苦労や痛みを想像できない人間たちでこの世界は溢れ返っている。

皆もしているだとか自分の責任を誰かのせいにして、
匿名でインターネットへ好き放題に書き込み、
自分の手を汚さずに人の心を傷つける見えない殺人鬼ばかり。

揚げ足を取り、脚を引っ張り、素直に他人の幸福を祝えず、
自分の不幸で己を正当化し、生産性のない濁って腐った掃き溜めのようだ。

この世界はとても冷たい。

フィクションのように近くに救ってくれる人や、頼りになる人、
そんな心に余裕のある人ばかりとは限らない。

それは誰もが自分のことで“精一杯”なのだろう。

学校や会社、家族や友人、そういった人と人とが共存する“囲われた世界”。

規律を乱して怒られないように、約束を破って嫌われないように、
孤立して迫害されないように、そういった沢山の“柵”のせいで麻痺してしまう。

その中で誰もが悩んで、苦しんで、時には笑って、時には泣いて、
そうやって生きていく中で何度も自分なりに考えを重ねていく。

はっきりとした答えが見つかっていない人もいるだろうし、
辿り着いた答えが決して正しいとも限らない。

それぞれがそれぞれの違う環境の中で必死に生きている。

だからこそ私は一人の“人間”として責任を持ち、
そして人の痛みを想像できる優しい人でありたい。


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「少女Aの考察、」

鉤括弧(「」)は囲われた世界を、読点(、)は考察の未完を表しています。

2012年の5月に結成し、今年で活動を始めて約7年。

“言えずに癒えない傷”をテーマに誰かの薬か毒になりたいと願って言葉を吐き出してきました。

しかし、これにて「少女Aの考察、」を“読了”とさせていただきます。

ここまで読んでくださった方がどれくらい残っているのかは分かりませんが、
殆どの方に相談も報告もせず、事後報告という形になり申し訳ございません。

そして約束を果たせなかった一人一人にごめんなさい。

メンバーが沢山入れ替わり、そして遂には正規メンバーが居なくなってしまい、
最終的にはサポートメンバーに支えていただき、ここまで活動を続ける事が出来ました。

そしてライブハウス、イベント、レコーディング、流通、アートワーク、Music Video、
支えてくれたスタッフと関わってくださった方々、共に共演してくださった方々、
そして勿論「少女Aの考察、」を応援してくださった方々、良かった事も悪かった事も含め、
関わった一人一人に嘘偽りなく本当に感謝しております。

「少女Aの考察、」は2014年の11月に一度終わっておりました。
それを無理に延命し続け、周りを巻き込み付き合わせておりました。

だから“解散”ではなく、“読了”という言葉を選ばせていただきます。

こんな言葉の一つや二つ、周りからすれば何だっていい事だと思いますが
最後まで捻くれ者で終わらせていただきます。


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「きっと、私は世界という細胞の中のアポトーシスなんだ」

それは冒頭の“生きているだけで悪い事をしているみたいな人生”
を表す言葉だったのかもしれません。

何もかも上手くいかず、毎度のように間が悪く、
生きていくには不向きなのではないかと思っておりました。

ですが気付けば図々しくもこの年齢まで生き続けております。
人生というのは何が起こるか分かりませんね。

これから何をして、何を目指すのか自分でも正直なところ分かりません。
発表の日付を何となく決めてから、ずっと考えて今日まで来ましたが
未だに未来は不透明でございます。

また音楽をするかもしれませんし、しないかもしれません。
こんな事を言っておいて3日後くらいにふらっと戻ってくるかもしれません。

終わりは突然ですが、始まりだって突然やってくるのです。

きっと、あなたの停滞した世界も何か些細なきっかけで終わり、そして始まることでしょう。

自分の首を絞めているのは恐らく殆どが自分自身なのだから。



2019年3月23日(土)
「少女Aの考察、」
Vocal & Guitar 西原


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